ソフトB「80億円補強」でも勝てない根本原因…劇的サヨナラ負けCS終戦、オリとの差は開く一方
惨敗である。16日のパCSファーストステージ第3戦。3位ソフトバンクが3-0で迎えた延長十回裏、2位ロッテに4点を奪われ逆転サヨナラ負け。1勝2敗で敗退した。
藤本博史監督(59)の就任2年目の今季は、近藤健介(30)やオスナ(28)ら総額80億円の大補強を敢行。ロッテに開幕3連勝するなど、10戦8勝の好スタートを切った。最大15の貯金をつくり、7月には優勝したオリックスに1.5ゲーム差をつけて首位に立ったこともあった。
が、7月下旬にチームは暗転した。球団史上54年ぶりの12連敗。オリックスが貯金を積み重ねる一方、夏場も成績は伸び悩み、2009年以来となる3年連続のV逸となった。巨額の補強費を投じながら、オリックスに15.5ゲームもの大差をつけられての3位に沈没。藤本監督が試合後、「突き抜ける若手が出てこなかった」と話したように、現場とフロントが一体となり、ドラフトと育成を軸にチームを強化、リーグ3連覇を達成したオリックスの背中は遠ざかる一方である。
■補強はハマったが生え抜き育たず
藤本監督の采配下手もさることながら、チームが勝てない原因はそれだけではない。評論家の山崎裕之氏はこう言う。
「たしかに近藤や有原の補強はハマった。しかし、ソフトバンクは近年、生え抜き選手が育っていない。特に投打の『軸』になりうる若手が不在だし、脇役も物足りない。打者は柳田、近藤に次ぐ選手がおらず、投手は今季からメジャーへ移籍したエース千賀の穴が埋まらなかった。先発投手で2ケタ勝利を挙げたのは有原ひとりだけで、このCSは初戦に助っ人のスチュワート、2戦目の有原ときて、3戦目は42歳の和田ですから。チームが過渡期に差し掛かっているのは間違いありません」
常勝時代の伝統が薄れているとの指摘もある。球団OBが言う。
「王監督時代は小久保、松中、井口、城島ら主力が練習から高い意識を持って取り組み、後輩の川崎、本多、長谷川らがその背中を追った。練習量は豊富で、何よりチームの勝利にこだわった。今は先頭に立ってチームを引っ張るリーダーがいないのです。年俸6億2000万円の柳田はそういうタイプではない」
■コーチ陣も指導力不足
21年、侍ジャパンの監督を務めた小久保現二軍監督が、ヘッドコーチとして現場に復帰。直後の春季キャンプで野手に「1日1000スイング」をノルマに課すなど、猛練習で選手を鍛えようとした。それまでのチームは効率を重視する一方で、練習量の少なさが若手底上げの足かせとなり、故障者の多さにつながっているとの指摘があった。
育成方法に問題が生じ始めたのなら、新しいやり方を取り入れてしかるべきだが、この小久保流には選手だけでなく、一部首脳陣からも反発の声が出たという。前出の山崎氏は「80億円の大補強は、自前の選手が育っていないことの裏返しでもある。首脳陣の指導力不足もあるのでしょう」と言えば、あるチーム関係者も声を潜めてこう明かす。
「ウチはここ数年、コーチの顔ぶれが変わらず、閉塞感がある。たとえば投手は球速が重視されるが、これでワリを食ったのが昨オフの現役ドラフトで阪神入りし、今季12勝を挙げた大竹です。緩急自在に打たせて取る投球がウリなのに、首脳陣から球速アップを求められ、構想から外れてしまった。コーチが代わらなければ、指導法は限られる。これにハマる選手はまだしも、そうでなければファームで腐ったまま。たまに外部からコーチを呼ぶことはあっても、優勝できなかった時などに真っ先に責任を取らされる傾向があります」