「大関が交代で優勝しても横綱は生まれない」…後継者の台頭を待ち望んだ大鵬の嘆き
琴ノ若が55年前の清国のようになる期待も持てるが…
かつて5大関を向こうに回して稽古をつけるなど、横綱と大関の違いを誇示してきた大鵬のいらだちが、目に浮かぶ。それが伝わったのか、明けて70年初場所は北の富士と玉乃島の優勝決定戦となり、連続優勝の北の富士は文句なし、同時に玉乃島改め玉の海も横綱に推挙された。「北玉時代」は玉の海の急逝でわずか1年ほどだったが、2人の伯仲は相撲史にしっかり刻まれている。
昨年の優勝力士は貴景勝、霧馬山(当時関脇、現霧島)、照ノ富士、豊昇龍(当時関脇)、貴景勝、霧島だった。初場所は霧島が11勝に終わって綱とりを逃し、豊昇龍は10勝しながら14日目から休場、貴景勝は春場所がまたかど番となる。
琴ノ若が55年前の清国のようになる期待も持てるが、その後もまた当時のように大関が交代で優勝して横綱が出ない展開があり得る。
しっかり攻めて勝つ相撲を、横綱のレベルで自分のものにできるのは誰か。優勝ラインも13勝は守ってほしいものだ。大鵬が健在なら、12勝の優勝で翌場所が綱とりと騒がれる現状をどう思うだろう。
▽若林哲治(わかばやし・てつじ)1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。