一発勝負の夏の大会 大院大高は「ノーサイン」で大阪桐蔭を2度倒せるか
雨の中で行われた実際の試合。0-0で迎えた六回表にその場面が訪れた。無死二塁のピンチで二塁走者は宇畑。投球がワンバウンドし、走者は三塁へスタートを切った。刺せる--と思った瞬間、戸松の送球が暴投となり、先制点を許した。
この年の横浜のレギュラーは右打者が多く、大院大高のアンダースロー投手・椎葉厚生に散発4安打に抑えられた。雨のため、田んぼのようなグラウンド状態の中、横浜の松井光介も力投したが、1-2で敗れた。
順当なら準決勝で優勝候補だった浦和学院と対戦するつもりだった。足をすくわれた格好で、あれだけ練習してきたプレーが本番でできなかった悔しさもあって、今でも覚えている敗戦だ。
その大院大高が今春はノーサインで大阪を制した。練習などは選手の自主性に任せ、髪形も自由だという。これは私の理想でもあるが、試合中に選手だけで作戦を決めるのは限界がある。まして一発勝負の夏の大会は、一度の判断ミスが命取りになる。大院大高の新しい野球に期待したいが、ノーサインで2度勝てるほど大阪桐蔭は甘くない気がする。