「たすけて、おとうさん」大岡玲著
大学生のマツキ君は、失踪した父親が残した借金を、夜勤のアルバイトで少しずつ返済している。学年末、再び休学を考えていたとき、顔見知りの教師と言葉を交わす。新学期からのゼミで童話を扱うと聞き、1年生のときに聴講したゼミで「ピノキオ」の話題が出たことを思い出す。本当のピノキオは、人間になるどころか狐と猫にだまされて、しばり首にされてしまうのだ。教師の話を耳にしながらマツキ君の脳裏には、溺れている自分を笑っている父親といういつも見る夢が浮かんでいた(表題作)。他、ヘミングウェー「老人と海」やカフカ「変身」など古典的名作とのコラボレーションから生まれた12作品を収録。
(平凡社 1800円+税)