「魂でもいいから、そばにいて」奥野修司氏
「突然の別れはつらいものですが、とりわけ津波という不可抗力によって、ましてや遺体が見つからないとなると、その悲しみは計り知れません。心の区切りは決してつかないけど、霊体験をして魂の存在を感じると、亡くなった人がそばにいる感覚になる。そばにいて自分を見ていると感じるから、もうちょっと頑張ろうかと生きる希望につながるんですね。実際、あの体験がなかったら生きていられなかったという人もいました。つまり、死者とのコミュニケーションである霊体験は、最高の癒やしになるんですね」
自分が納得できる物語が作れたとき、残された人は初めて生きる力を得る。そして、人に語ることでその物語は完成する、と著者は考える。ところが、その物語を体験者の多くは、家族以外に話していない。信じてもらえないと傷つくからだ。
著者も「本当のことだからね、信じてよ」、あるいは「聞いてもらえてホッとした」と何度となく言われたそうだ。
「悲しみは受け止める人がいて初めて悲しめるんです。一人だとこらえるしかない、ということを取材を通して改めて感じました。不思議な体験を非科学的だと否定するのではなく、悲しみを抱えた人の声に耳を傾ける社会であれば、残された人たちはもう少しラクだったかもしれません」