「発達障害」岩波明氏
たとえば、個人の能力が問われるアーティストや弁護士などの専門職は、障害があっても能力でカバーできるので才能を発揮できる。ADHDの患者は同時並行の仕事を振られるとパニックを起こし失敗するが、周囲が仕事をひとつずつ振る工夫をするだけでうまくやれるのだ。
著者の勤務する大学病院の発達障害外来では、デイケア治療を受けて社会復帰できた患者が、障害者雇用を含めると、3年間で3~6割に増えたというデータがある。
「とくに、患者同士で話し合うことがよいようです。患者は安心できるし、ほかの人がやっている対策を知り、自分なりの対策を考えられますから。もともと知的能力が高い患者が多いので、吸収は早いですね」(文藝春秋 820円+税)
▽いわなみ・あきら 1959年、横浜生まれ。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院などで臨床経験を積み、約10年前から成人期の発達障害に注力。2012年、昭和大学医学部精神医学講座主任教授に就任し、15年、同大学付属烏山病院長兼任となり日本初のADHD専門外来を担当している。