「食べ歩くインド」小林真樹著

公開日: 更新日:

「食べ歩くインド」小林真樹著

 年を経るごとに本棚の一等地を占める書籍群は変化していく。かつて隆盛をきわめた絵本、酒場本、落語本などは一線から退いた。近年とみに充実してきたのがイラン棚とインド棚だ。最近、自分でもイランの本を書いたので、イラン関連書籍が増えるのは理解できる。一方、なぜかどんどん増えていくのがインド本だ。

 わたしがインドに行ったのは酸いも甘いも噛み分けた40代半ば。若い子みたいにいまさらインドにハマることもないだろう、と思ったらどハマりした。

 あの魅力って、なんなんだろう? 道にはたくさんの人がいて、牛がいて犬がいて猫がいて、ゾウの神様とネズミもいる。それぞれが肯定されて存在しているごちゃごちゃ感。あの空気を追体験したくて、インドの本を見つけるとつい買ってしまう。

 街で気になる食堂を見つけたら、ためらわずに入店できる旅人でありたい。そう思っているわたしにとって、インドの食堂のワンダーランドっぷりは目がくらむ。メニュー(インドの言語はどれも文字がかわいい。もちろん読めない)、食器(たとえばバナナの葉)、おかわりのシステム(おかずごとに担当がいて超速でよそってくれる)……すべてが気になりまくり。そして「おいしかったー。でもなんの野菜だった? あの酸味は一体?」と疑問だらけで終わる、それがインド食堂。

 そんなめくるめくインド食堂を20年にわたって食べ歩いた著者による「最強の指南書」がついに誕生した。656ページの大著、豊富な写真、巻末の用語解説の充実ぶり。これは買う。買わずにはおられない。長くわが本棚に君臨するであろう。

(阿佐ヶ谷書院 4290円)

【連載】金井真紀の本でフムフム…世界旅

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動