「誰も書かなかった統一教会」有田芳生著/集英社新書(選者=佐高信)
統一教会と癒着した自民党の腐敗を析出する良書
「誰も書かなかった統一教会」有田芳生著/集英社新書
「統一教会は自民党の外にあるのではない。中に入っている。国会議員等の秘書に統一教会員がいるのは明らかだし、議員自身にも怪しいのはたくさんいる」
拙著「統一教会と創価学会」(旬報社)の「はじめに」に私はこう書いた。
長年この危険な教団と闘ってきた有田は、統一教会と一体となった自民党の腐敗をさまざまな角度から析出する。
「とういつきょうかいの わるぐちをいうやつは みなごろしだ」
朝日新聞阪神支局が襲撃された3日後の1987年5月6日に朝日新聞東京本社に届いた脅迫状にはこう書かれ、使用済み散弾銃の容器2個が同封されていた。
「親泣かせの『原理運動』」として同紙が批判したことへの報復と考えられた。統一教会の「統一原理」を研究する学生のサークルである原理研究会は、有田によれば「現在でも、東京大学、京都大学、早稲田大学など、全国の大学」に存在する。特に親元を離れて初めて1人暮らしをする1年生は原理研の勧誘の格好のターゲットになっているのである。統一教会問題はまったく終わっていないのだ。
筆者の副島嘉和が瀕死の重傷を負うことになった「これが『統一教会』の秘部だ」(「文芸春秋」1984年7月号)には、韓国の済州島グランドホテルで開かれた幹部会議で文鮮明が「日本では朝日、毎日、読売のどれかを買収する。信じ難いことであるが、日本の大手新聞社買収の件は現在、具体的な話が来ているので、二年後には着手する」と語ったとある。
アメリカで脱税で服役していた文鮮明を釈放してくれるように岸信介がレーガンに嘆願書を送ったのは知られているが、下院に設置されたフレイザー委員会の日本での調査を日本の政府が阻んでいたというのには驚いた。
「日本当局は当初、米国大使館内での米国人ビジネスマンに対する聞き取りすら、ビザ条件外として却下したほどだった」
その非協力的姿勢を報告書はこう指摘しているという。
自民党と統一教会が二人三脚でやってきたからにほかならない。現在はこの統一教会ウイルスに維新はもちろん、国民民主党も汚染され、統一教会の求める改憲運動に走っている。有田は最後に「統一教会の軍事部隊」にも触れているが、その恐ろしさに自民党と汚染された勢力が気が付いているとは思えない。 ★★★