果物から海の幸まで…「食卓のSDGs」で注目される企業3社はココだ
■「日本果汁」コロナ禍の経営改善策として始めた柑橘の果皮を使った「オランジェット」がヒット
SDGs(持続可能な開発目標=Sustainable Development Goals)が掲げられた2015年から来年で10年を迎える。現在、「食卓のSDGs」はどう変わってきたのか。注目の企業を取材した。
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京都の木津川市にある(株)日本果汁の工場は、全国から仕入れた果実からシロップやジュース、菓子など加工品までの製造を担う。果汁の搾汁だけではなく、果皮も有効活用するための工場設備があるのが特徴だ。
工場では、果実は果肉と果皮に分けられたあと、種が除かれて果汁として抽出される。レモンの果皮が集められた工場は爽やかな香りが立ち込め、人手によって果皮の選別作業が行われていた。合格した果皮はフルーツピールとして砂糖漬けにされる。
日本果汁がBtoCの加工品の生産に注力し始めたのは2020年。コロナ禍でこれまでのBtoB製品販売のみでは不安定となり、打開策としてスタートした。果皮で作られた菓子「オランジェット」は好評で、自然な果実の風味があり美味しい。「果皮に付加価値がありますし葉や種の商品化も行っています」と話すのは河野聡社長だ。廃棄の出ない加工にこだわっているという。
原料産地となる地域は、人口減少と超高齢化社会で農業の担い手確保が困難であり、特に家族経営の農家となれば経営難もまぬがれない状況だ。河野社長は事業を継続するためには、原料産地や農家が元気になるべきだと考え、全国の小規模農家へ自ら足を運び、収穫も手伝う。熱き農業サポーターでもある。
日本果汁の原料は全国の産地から適正価格で継続的に仕入れている。というのも果実をまるごと有効活用することで原料買い取り価格を適切に設定できるからだ。これまで農家から仕入れた果実(レモン、ゆず、みかん、メロン、苺、ブドウ、パッションフルーツなど)は100種類以上にのぼる。珍しいのは最終的な加工品に原料の生産地が表示されることだ。農家が育成した生産物が廃棄されることなく消費者へと届けられるなら嬉しい供給になる。
「それぞれの農家が抱える課題を一緒に考えたい」(河野社長)と様々な加工品を通じて農家と消費者を繋いでいきたいという。