「福袋」朝井まかて著

公開日: 更新日:

 短編はあまり得手でないという著者の初の時代小説短編集。

 収録されているのは全部で8編。不得手といいつつ、いずれも趣向が凝らされて見事な仕上がり。登場人物たちも実に多彩。

 3代目鳥居清忠からしがない看板書きの手に渡った「筆」(「ぞっこん」)。ひいきの客を得て、千両役者になることを夢見る大部屋の歌舞伎役者(「千両役者」)。働き者の母親に楽をさせたいと願うけなげな湯屋の一人娘(「晴れ湯」)。兄嫁を疎ましく思っているが、その兄嫁の思わぬ素顔を知って驚く古着屋の娘(「莫連あやめ」)。出戻りの姉を大食い大会に出して賞金を稼ごうとする乾物屋の主人(「福袋」)。かつて自分が描いた春画を見せられて動揺する女絵師(「暮れ花火」)。神田祭の差配を任されて右往左往する堅物の家主(「後の祭」)。その日暮らしの気ままな生活から一転、商売に目覚めた若者(「ひってん」)。

 笑いあり、涙あり、ドラマありと、江戸庶民の哀歓を活写した、著者の新境地を示す短編集。(講談社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる