「日本ボロ宿紀行」上明戸聡著
歴史的価値のある宿から古い安宿まで、昔ながらの営業を続けている各地の「ボロ宿」を巡る紀行エッセー。
八戸の「新むつ旅館」は、明治31年に創業した遊郭が戦後に転業したもので、館内の随所に当時の面影が残っている。迷路のような内部を探索したり、女将の語る宿の歴史や古い建物を維持する苦労話に耳を傾ける。
そのほか、千葉県佐原の「木の下旅館」のように有名な由緒ある宿から、外見は廃虚のようで今にも崩壊しそうな那須湯本の「喜楽旅館」や、部屋の障子は破れ、トイレはくみ取りという正真正銘のボロ宿だが、温泉がピカイチで入浴客が引きも切らない鹿児島の秘湯・白木川温泉「旭屋旅館」まで。消えゆく宿文化を求めて全国を旅する。 (鉄人社 680円+税)