「離島ひとり旅」大畠順子氏

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 旅行や出張などで日本国内の観光地はほとんど制覇し、行きたいところがなくなってしまった……。そんなあなたにおすすめなのが、「離島」への旅だ。国土交通省の定義では、北海道・本州・四国・九州・沖縄本島の5つ以外の島は離島と呼ばれ、2018年現在で人が暮らす有人離島は418島にも上るという。

「海外旅行となるとお金も日数もかかり、パスポートが必要で言葉は通じず文化もまったく異なるなどハードルは高くなります。でも、日本の離島なら、比較的手軽に行ける上に言葉も通じるし安心感もある。その一方で、同じ日本でありながら異文化・異世界を感じることができ、都会では決して味わえない、島の人々との人間味あふれる交流も体験できます。知っているようで知らない日本に出合える。それが離島への旅なんです」

 本書では、初めて訪れた佐渡島の北に位置する粟島で離島の魅力にとりつかれ、以来、国内の離島旅を続けてきた著者が、非日常が味わえる離島30島を厳選。土日の休みに行ける離島からマニアックな秘島まで、初級・中級・上級編と分けて写真付きで紹介している。

 離島旅の世界への扉を開けてくれた粟島は、新潟県北部にある村上市の岩船港から高速船で55分でアクセスできる。人口は370人(2015年国勢調査)。島の周囲は23キロで、数時間あれば自転車で回れてしまう。コンビニなし、飲食店はわずか数軒あるが、それ以外は山と海という離島の魅力が濃縮された場所。著者はこれまで4回も訪れているという。

「離島というと住んでいる人はわずかで豪華なグルメなどは期待できず、あるのは大自然のみ! と思われるかもしれませんが、とんでもない。豪快な自然美が堪能できる島もあれば、すてきな宿泊施設とおもてなしに癒やされる島もあるんです。絶品グルメ旅ができる島だってあります。418島の中には、自分の旅のスタイルにピタリと合う離島が必ずあるはずですよ」

 ちなみに粟島には「かもめ食堂」という飲食店があり、なんと1杯2000円もする要予約のラーメンがあるという。注文してみると、島でとれたアワビにサザエ、メカブにイカ、タコなどがこれでもかと具材に使われ、お値段にも納得の一品だったという。

 離島の旅では、都会ではあり得ないことが当たり前に起こることは肝に銘じておく方がいい。閑散期にとある離島を訪れた著者は、宿泊した民宿で夕食の時間になった途端、女将から「夕飯食べに行こう!」と近所の飲食店に連れて行かれたことがあったという。宿泊客は著者ひとりだったため、夕食を作る手間を省いたのだろう。そして、2人で夕食を食べて民宿に戻ると、女将は「ちょっと出かけてくるね!」と言い残し、飲み会に出かけてしまったそうだ。

「まだ離島旅を始めたばかりの頃だったので、大変な衝撃でした(笑い)。でも、何とも人間味にあふれていて、都会の一流サービスとは対極にあるけれど愉快に思えてしまう。これが離島旅のおもしろいところなんです」

 離島旅の魅力を味わい尽くしたいなら、夜、島の居酒屋に入ってみるのがおすすめだという。都会の居酒屋とは違い、狭い店内にいる客は互いが顔見知りの島民ばかり。観光客であるあなたが店のドアを開けた瞬間、「誰だ?」と一斉に注目を集めるだろう。しかし、勇気を出して一歩店内に入ってしまえば、温かく受け入れてくれるのが離島のいいところだ。

「私も最初は勇気がいりましたが、今では居酒屋がある島なら必ず夜出かけるようにしています。島暮らしの話や絶景ポイントなどを教えてくれたりして楽しいお酒になること請け合いですが、“あす一日、案内するよ”など必要以上に踏み込んでくることもない。絶妙な距離感で受け入れてくれるのも、ありがたいんです」

 離島旅の心構えや島選びのポイント、必ず持っていくもののリストなども紹介。本書を参考に、離島旅デビューをしてみては。

 (辰巳出版 1500円+税)

▽おおはた・じゅんこ 1983年、群馬県出身。2011年から日本の離島ひとり旅を始め、週末に行けるお手軽離島旅から、秘境・異文化を味わうマニアック離島旅まで、これまでに約40島を旅している。普段はラジオ局に勤務する普通の会社員。

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