「織田信忠――天下人の嫡男」和田裕弘著
信長の後継者だった嫡男・信忠は、かつては家康の長男の信康より能力が劣り、信忠の世を安泰にするため、信長が信康に自害を命じたとされていた。しかし、近年の研究では信忠が決して凡庸な2代目ではなかったことが明らかになっている。
天正5年、謀反を起こして信貴山城に籠城した松永久秀を、わずか10日ほどで攻略。翌年には5万以上の大軍を指揮して大坂本願寺を牽制。このとき、信忠は若干22歳だった。
さらに天正10年の武田攻めで先鋒だった信忠は、信長の制止を振り切り快進撃を続け、武田氏を滅ぼす武功をあげた。信忠が本能寺の変に巻き込まれていなければ、歴史は大きく変わっていただろう。信長の陰に隠れて印象が薄い信忠の事績を丹念に追いかけ、その26年の生涯に光を当てた評伝。
(中央公論新社 860円+税)