「らんまんの笑顔『人間・牧野富太郎』伝」谷是、谷村鯛夢著
「らんまんの笑顔『人間・牧野富太郎』伝」谷是、谷村鯛夢著
郷里が生んだ偉人、牧野富太郎を長年、研究、啓蒙してきた郷土史家による語り下ろしの評伝。
後に「世界のマキノ」と称される博士は、その94年の生涯で、当時6000種あるといわれた日本の植物のうち1000種に命名、600種の変更分類を行い、それまで適当な名前で呼ばれていた日本の草花に世界で通用する学名をつけた。北から南まで日本全土をくまなく歩き、生涯に集めた植物標本は40万枚に及ぶ。
驚くことに、その最終学歴は小学2年で中退。幼いころから地元の儒学者らに学んできた富太郎には、学校の授業は物足りなかったらしい。以後、できた時間で近所の山々を歩き、草花の観察・採集をするとともに、書籍から知識を得てきた。
幕末の文久2(1862)年4月、土佐・高知の盆地・佐川の裕福な造り酒屋に生まれた富太郎。その幼少期から、さまざまな人との出会いで植物学を深めていく青年期、妻・壽衛(すえ)とのなれそめ、そして家の没落で極貧生活を送りながら、世界にその名をとどろかせるまでを、エピソードたっぷりに伝える。
(集英社 1760円)