「ぼくたちがコロナを知らなかったころ」吉田修一著
「ぼくたちがコロナを知らなかったころ」吉田修一著
人気作家のエッセー集。書名の通り、新型コロナウイルスの流行が起きるとは誰も知らなかった、2016年秋から19年秋までの雑誌連載を収録。
世界各地で行われるブックフェアには何度も誘われてきたが、こうしたイベントが苦手で、これまでは遠慮してきた。しかし、中国の担当編集者の熱心さに応えようと、上海で行われるブックフェアに参加。目の回るようなスケジュールの3泊4日を振り返り、街や住人たちへの思いを記す。
ほかにも、思い立って誕生日前日に出かけた伊勢参りや、冬になるとなぜか甘えてくる飼い猫とそのことについて友人が発した一言との葛藤、新居への引っ越しで思い出す芥川賞候補になったと知らせを受けた20年前のあの日のことなど、日常の点景がつづられる。 (集英社 660円)