「発酵食品と戦争」小泉武夫著
「発酵食品と戦争」小泉武夫著
味噌や醤油など、日本人にとって発酵食品はなくてはならないもの。戦時中から戦後にかけての窮乏生活を支えたのも発酵食品だった。
また、人類は発酵という微生物の働きを利用してさまざまな軍需物資をつくってきたという。本書は、戦争という視点から発酵文化について解説したテキスト。
納豆は平安時代から兵糧として重宝され、塩を加えて干した納豆は日清・日露戦争でも携行食として欠かせず、真珠湾攻撃に向かう連合艦隊の艦内でも納豆づくりが行われていたという。
以降、戦時下でつくられたさまざまな発酵食品や酒を紹介。さらに爆薬の原料となるニトログリセリンの製造や、研究が進められていた芋を原料とした航空機の燃料生産など。発酵を利用した戦争の現実を紹介しながら発酵という驚異の作用とその可能性を説く。 (文藝春秋 1155円)