「風呂と愛国」川端美季著
「風呂と愛国」川端美季著
日本人は、いつから毎日入浴することが「当たり前」だと思うようになったのか。本書は、日本人の入浴の歴史をたどりながら、入浴が清潔という概念と結びつき「日本人は入浴好きで清潔な国民である」という意識が生まれた背景を解き明かしていくテキスト。
6世紀半ば、仏教とともに風呂という様式が日本に伝わった。当時は、湯で満たされた浴槽ではなく、蒸し風呂だった。そして遅くとも鎌倉時代には、営利目的の浴場が登場したという。その後、江戸時代初期に蒸し風呂と湯につかる温浴の混合したものが現れた。
こうした前近代の入浴の歴史に始まり、明治から大正期にかけて、入浴が清潔さと結びつけられ、さらに清潔さが体のみならず精神と結びつけられ、それが国民性として共有されていく過程を追う。 (NHK出版 1078円)