「百にゃん一首」笠間書院にゃんこ部編
「百にゃん一首」笠間書院にゃんこ部編
百人一首を用いた歌がるたは、たこ揚げや羽根つきと並んで、かつては正月の風物詩だったが、それらはもはや昭和の風景となりつつあるようだ。
せめてもの正月気分を味わいたいなら、こんな本はいかがだろう。百人一首ならぬ百にゃん一首とは、猫にまつわる短歌に愛らしい猫(とネコ科の動物も)の写真を添えたフォト短歌集だ。
兄弟、それとも姉妹なのか、グレーと白のツートンカラーの子猫に、手(前脚)のひらをひっくり返して寄り添うように眠るクリーム色の子猫。その写真には「仰ぎ見る肉球の中に桜もよう 来年もきみと見れますように」の歌が添えられる。
「トイレから出てきたら猫もトイレ中 絆感じる月曜の朝」という歌には、真剣な顔でトイレ中のハチワレの写真が。
かと思えば、三毛猫の写真に若山牧水の「朝の囲炉裏猫もとりわけあまゆるを あやしてあれば啼けるうぐいす」という歌が添えられていたり、毛づくろい中でかわいらしい舌が出たスコティッシュフォールドの写真には「猫の舌のうすら紅き手ざはりの この悲しさを知りそめにけり」という斎藤茂吉の歌が添えられるなど。詠み人は、にゃんこたちの飼い主から、明治や昭和の歌人たちまでさまざま。
にゃんこたちも、天童温泉の旅館のネコ女将「まいちゃん」や、宇都宮動物園のネコ園長「さんた」などの有名ネコから、SNSで人気のネコまで、どれも個性派ぞろい。
「寒くない?ねこに毛布をかける手に『俺にもかけて』とつぶやく夫」など思わず笑ってしまう歌から「いつの日か必ず来る別れの日 身構えてなお愛しさが増す」などと胸に迫るものまで。
ネコ尽くしで一年のスタートが切れるお薦め本。愛猫家へのプレゼントにも最適。 (笠間書院 1870円)