「日本のおむすび」菅本香菜著
「日本のおむすび」菅本香菜著
おむすび──「おにぎり」や「握り飯」とその呼び方はいろいろあれど、日本人にとって最強、そして最高のソウルフードであり、ファストフードであることは間違いない。
シンプルを極めた塩むすびをはじめとする定番から、家庭ごとにオリジナルの具材や形、工夫があり、コンビニには季節限定商品がならぶなど、その種類は無限大だ。
本書は、47都道府県を巡り、地域の特色あるおむすびを取材して、そのレシピとともに紹介するビジュアルブック。
まずは北から。北海道の十勝地方の広尾町にはアイヌの文化を感じられるおむすびがある。塩の代わりに「星屑昆布」をまぶしたおむすびだ。同町は昆布の産地で、昆布はもともとアイヌの人々の言葉「コンプ」が中国に渡り、外来語として日本に入ってきたという。
昆布漁師が開発した星屑昆布は、規格外の昆布を粉砕して料理に使いやすくしたものだそうだ。
山形の「弁慶飯」は、生味噌を塗った太鼓型のおむすびを青菜(せいさい)漬けで包み、炭火(難しければトースターなど)で焼いたもの。名前の由来は義経の家来の握りこぶしに似ていることからこの名がついたという。
以降、南下しながら島特有の油味噌「アンダンスー」を具材にした沖縄のおむすびまで、全94種類のおむすびを紹介。
中には、あんこの入ったまんじゅうを赤飯で包んだ埼玉県羽生市の郷土食「いがまんじゅう」や、米や野菜を油揚げで包んで炊き上げる鳥取県の握らないおむすび「いただき」などの変わりおむすびも多数あり、何ともお腹がすいてくる。
掲載されたエピソードに触発され、きっと読者のおむすびの思い出もよみがえってくることだろう。おいしくて、そしてお腹も心も満たしてくれる、それがおむすびだ。 (ダイヤモンド社 1760円)