“酒豪俳優”石倉三郎 京都からの誘いに「行くよ」と新幹線で…
俺が「行く」って勢いで言っただけで、来るとは思ってないからね。2人はドラマか何かのロケで、京都にいたらしいんだけど、そのまま3、4軒ハシゴしてドンちゃん騒ぎ。気が付いたら明け方でした。
「誘いは一切断るな。酒の席には福がある」というのが俺の信念だし、まあ、これくらいのシャレっ気があるほうが酒って楽しいでしょ。
俺は小豆島生まれの大阪育ち。父親も母親も貧乏なのに酒ばかり飲んでましてね。もちろん、一番安いカストリ焼酎ですよ。今思うと、貧乏暮らしから現実逃避したかったんでしょう。そんな家庭だったし、中卒で工員になったから、酒を覚えたのは10代でした。
本格的に飲みだしたのは東映の大部屋役者時代だから、22歳ぐらい。縁あって、高倉健さんのご紹介で東映に入ったものの、“大部屋”だから通行人だったり、キャバレーのウエーターだったり、チンピラA、B、CのCとかね。
健さん主演の「新網走番外地 大森林の決斗」(1970年)に囚人役で出演できたのはうれしかったけど、ちゃんとした役がもらえる俳優になれるかといえば、そんなに甘くはない。まったく先が見えない中で悶々としながら、暇さえあれば大部屋の仲間と飲んでました。