著者のコラム一覧
中村竜太郎ジャーナリスト

1964年生まれ。大学卒業後、会社員を経て、95年から週刊文春で勤務。政治から芸能まで幅広いニュースを担当し、「NHKプロデューサー巨額横領事件」(04年)、「シャブ&ASKA」(14年)など数々のスクープを飛ばす。「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」では歴代最多、3度の大賞を受賞。2014年末に独立し、現在は月刊文藝春秋などで執筆中。フジテレビ「みんなのニュース」のレギュラーコメンテーター。

<第1回>どこで亡くなったのか。誰が看取ったのか。最期の容体は――。すべてがわからなかった

公開日: 更新日:

 故人の遺志に従い、すでに近親者によって密葬された後だった。私は週刊文春編集部からのオファーを受け、取材を開始した。健さんの私生活はほとんど明かされておらず、懇意なマスコミも突然の訃報に驚いていた。

「うちもまったく知らなかったんです」

 知り合いのスポーツ紙デスクも困惑の様子だった。

「いつから闘病していたんですか」

「それがまったくわからない」

「どこの病院かご存じですか」

「いま調べているところですが、なにせ健さんはプライベートが謎ということで有名だったから。本当に苦戦しているんです」

「亡くなって1週間たっているけど……」

「そうなんです、普通これだけの大物が亡くなったら、すこしは噂で伝わるんですけど、今回はいっさいありません。芸能関係者で知っている人はほとんどいないと思いますよ」

 これは取材が大変だ、と思った。同じく電話の向こうはざわざわとし、他の電話がけたたましく鳴っているのが聞こえた。

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