<第1回>どこで亡くなったのか。誰が看取ったのか。最期の容体は――。すべてがわからなかった
故人の遺志に従い、すでに近親者によって密葬された後だった。私は週刊文春編集部からのオファーを受け、取材を開始した。健さんの私生活はほとんど明かされておらず、懇意なマスコミも突然の訃報に驚いていた。
「うちもまったく知らなかったんです」
知り合いのスポーツ紙デスクも困惑の様子だった。
「いつから闘病していたんですか」
「それがまったくわからない」
「どこの病院かご存じですか」
「いま調べているところですが、なにせ健さんはプライベートが謎ということで有名だったから。本当に苦戦しているんです」
「亡くなって1週間たっているけど……」
「そうなんです、普通これだけの大物が亡くなったら、すこしは噂で伝わるんですけど、今回はいっさいありません。芸能関係者で知っている人はほとんどいないと思いますよ」
これは取材が大変だ、と思った。同じく電話の向こうはざわざわとし、他の電話がけたたましく鳴っているのが聞こえた。