妖気漂わせ 水木しげるさんが語っていた後世へのメッセージ
「腹が減っても人は死なない」――。
30日午前7時ごろ、多臓器不全のため都内の病院で亡くなった水木しげるさん(享年93=本名・武良茂)。言わずと知れた昭和を代表する漫画家で、2010年に文化功労者に選ばれた。その前年の日刊ゲンダイ新春号のインタビューで、水木さんはこう語っていた。
インタビューは08年冬に東京・調布の仕事場で行われた。折しも日本はリーマン・ショック直後で株価が大暴落、景気は大幅に後退していた。いつクビを切られるかと怯えるサラリーマンに向けたメッセージを求めると、「どんなに努力して、頑張っても、ダメなときはある」「あまり思い詰めずに、わが道を楽しんでほしい。たまには『なまけ者』になるのも、生きていくには必要ですよ」。
当時すでに80代後半。記者の質問が聞き取れないこともあったが、時折、目をつぶって真剣に、丁寧に答えていた。ただならぬ“妖気”を漂わせつつ、手土産の人形焼きには満面の笑みを浮かべる大らかな人だった。
水木さんは15歳で印刷会社に勤めた後も、職を転々。「他人にゴチャゴチャ言われるのが嫌い」だったせいで、就職するたびにクビに。