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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

家を通じ“生き方”提案 北川景子「家売るオンナ」脚本の妙

公開日: 更新日:

 北川景子(29)といえば、昨年の「探偵の探偵」(フジテレビ系)が印象に残る。北川は全身から怒りのオーラを発するヒロインを、キレのいいアクションも披露しながら見事に演じていた。その後、DAIGOの妻(!)になったりしたが、この「家売るオンナ」(日本テレビ系)で本格復帰だ。

 中堅不動産会社の新宿営業所に、成績抜群の営業ウーマン・三軒家万智(北川)が異動してくる。不動産って高額商品だからね。そう簡単に売れるもんじゃない。しかし、万智は違う。何しろ「私に売れない家はない!」のだ。北川がケレン味いっぱいにキメぜりふを言い放つたび、堂々のコメディエンヌぶりが笑える。

 先週の物件は坂の上の売れ残りマンション。相手はもともと一軒家を探していた医師夫妻だ。万智は彼らの一人息子に注目する。忙しい両親に甘えることも出来ず、どこか寂しそうな少年だ。万智の中にひらめくものがあり、結局、彼らはマンションを購入する。

 この初回を見て、彼女がスゴ腕である理由が分かった。その家族が抱えている、しかも本人たちさえ気づいていない問題点や課題を見抜くのだ。家はその解決に寄与するツールとなる。

 つまり万智は家を売っているのではない。家を通じて“生き方”を提案しているのだ。これをユーモアあふれる“仕事ドラマ”に仕立てた、大石静の脚本に拍手である。

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