<第1回>長寿人気を支えた 目、耳、舌を楽しませる仕掛け
平成元年から28年の歴史を刻んだ中村吉右衛門の「鬼平犯科帳」(フジテレビ系)が、12月2日「五年目の客」、3日「雲竜剣」2夜連続スペシャルでいよいよファイナルとなる。ファンとしてはさびしい限りだが、きっちりと引き際を決めた潔さもまた「鬼平」らしさという気もする。
「鬼平」魅力の第一は主人公長谷川平蔵の人柄だろう。妾腹に生まれ、若いころには放蕩三昧。剣は凄腕でちょっとワル。これで女にモテないわけがない。その後、火付盗賊改方長官となった平蔵は、自分が見込んだ盗賊を密偵にする。その信頼に命がけで応える配下の者たち。人の世の裏表を知り尽くしたおとなの男、厳しさと温情を併せ持つ鬼平はしばしば理想の上司といわれる。事件探索のサスペンスとともに身分を超えた人間ドラマも見どころだ。
中村吉右衛門(72)は40歳のとき、「次の鬼平に」と原作者の池波正太郎から直々に依頼されたが、「40歳はまだまだ小僧ですから」と断ったという。しかし、5年後、再び池波から声がかかり、ドラマ化が実現。原作者の強い思いが感じられる。
■江戸の四季を描くエンディング