<中>世の中が“右へ倣え”の風潮の中、役者は何をすべきか
チョイ役から主役級まで数多くの役でほかの役者との違いを出してきた。1962年のデビューから、すでに55年。大ベテランは、今のテレビドラマをどのように思っているのだろうか。
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今は昔と違って、人間が薄味になっている気がします。僕が中学生だった頃は、町内にいろいろな顔をした大人が住んでいました。
僕は人類学者ではないので専門的なことは分かりませんが、肌感覚として、多様性が乏しくなっているように思います。それがテレビドラマにも影響しているのではないでしょうか。
ドラマっていうのは一種の差別や区別から生まれるもの。話の通じない者同士のやりとりが、はたから見ていて楽しいのです。同じようなタイプ、考えの人間ばかりになってしまうと、時代を映す鏡であるドラマは作りづらくなる。テレビドラマが元気がないなんていわれるのは、乱暴に言ってしまえば、時代のせいかもしれません。
もちろん、それを口実に作り手側が手を抜くようなことは許されません。そんなことをしたら、作り手より感受性が豊かで頭もいいお客さんに、すぐに見透かされてしまう。特に役者は、汗もかけば屁もこくんだっていう日常生活の中で、寸の合った人間を表現することが必要です。僕がのらりくらりとしながらもここまでやってこれたのは、セリフをしゃべるだけの俳優ではなく、現実にいそうな人を演じてきたところにあると自負しています。