「ユリゴコロ」監督が太鼓判 吉高由里子は愛憎が似合う
■殺人者だけど、サイコキラーではない
「ただし、殺人者を肯定する作品にはしたくなかった。やっぱり殺人は許せない犯罪だからです。極端な話をすれば映画はフィクションであり、殺人者を肯定する作りもできるけれど『人を殺す行為は決して許されるものではない』という考えをプロデューサーらと共有し、最初からこれを明確なビジョンとして掲げられたからこそ映像化できた。基本的な道徳、倫理ですが、社会と映画の関係や作り手としての立ち位置を明快にすることが大事だったんです」
人を殺すことに心のよりどころを求める美紗子を演じたのは、5年ぶりの映画主演となった吉高だ。
「殺人者だけど、サイコキラーではない美紗子役は彼女以外に考えられませんでしたね。目の芝居、表情、たたずまい……吉高由里子の全部で、美紗子の魔性や陰を表現してくれました」
「主人公に共感できない」と話す吉高とは5、6時間、酒を飲みながらとことん話し合った。
「たとえ共感できない役でも、掘り下げることが大事なんです。バラエティー番組に出ている吉高さんはポワーンとしたファニーな感じですが、本当はとても頭の回転が速い。面白い発言ができるのは、発想力が豊かでカンも鋭い証拠。現場でもこちらの意図に一発で簡単に寄せてくるんです」