著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

内山理名「マチ工場のオンナ」 女社長を“体育会系”で好演

公開日: 更新日:

 3年前に出版された諏訪貴子「町工場の娘」は、経営者だった父が急逝し、普通の主婦から突然社長になった著者の回想記だ。

 この本が原作の「マチ工場のオンナ」では、物語の舞台を東京の大田区から名古屋へと移している。主演はNHK連ドラ初主演となる内山理名(36)だ。

 有元光(内山)は父・泰造(舘ひろし)に可愛がられて育った。しかし成長するにつれ、亡くなった兄の代わりに会社を継がせようとする父に反発して、結婚後は距離を置いてきた。それが、まさかの社長就任である。

 光は倒産を避けようとリストラを断行し、社内は一気に険悪ムードだ。また銀行からは素人経営者として雑に扱われる。さらに夫の海外赴任が決まるが、自分は同行することができず、幼い息子の気持ちも揺れ動く。

 そんな内憂外患だらけの主婦社長を、内山が明るく演じている。悩んだりはするが、最後は自分の意思で決定し、結果も自分で引き受けていく。このドラマでは、内山が持つ“体育会系資質”がうまく生かされている。

 すでに原作にもある、工場内の「整理・整頓」大作戦や、若手社員の意見を聞く「悪口会議」なども実施。少しずつだが、会社も光自身も変わり始めた。ずっと父を支えてきた2人の古参社員(竹中直人、柳沢慎吾)の存在感が光る分、会社の経営も主演の内山も、後半戦からが本当の勝負だ。

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