著者のコラム一覧
てれびのスキマ 戸部田誠ライタ―

1978年生まれのテレビっ子ライター。「芸能界」というビジネスは、いかにして始まったのか。貴重な証言を収録した「芸能界誕生」(新潮新書)。伝説の番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」を基に描く青春群像ノンフィクションノベル「史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記」(双葉社)。2つの最新著が絶賛発売中!

一発屋こそ勝ち組…髭男爵の芸はレトルト食品級の"発明"だ

公開日: 更新日:

「一発屋の芸って懐メロ的な要素もあるじゃないですか。フォーって聴いたら2005年を思い出す。あの頃のまま聴きたい。変なアレンジはいらない」

 その言葉通り、髭男爵が、当時のまま「ルネッサンス!」とグラスを掲げると、信じられないくらい観客は盛り上がったのだ。

 髭男爵が「乾杯ネタ」を初めて行ったのは、04年。相方のひぐち君は「最初に山田に提案された時は、『こんなネタ、怒られるだろ!』と大反対した。だってツッコミが“ワイングラスで乾杯”ですよ?」(新潮社=山田ルイ53世著「一発屋芸人列伝」18年5月31日発売)と述懐する。

 山田も「若干の背徳感、罪悪感はあった」(同前)と告白する。キャラの皮をかぶっているが、実は正統派漫才を皮肉る漫才批評的な側面があるネタだからだ。だが、同時に山田には「誰もやったことがないネタ」ができたという高揚感があった。やがて進化したこの漫才で08年ごろ、大ブレークを果たすのだ。

 いったん、講義を締めた山田は「本当はもう1個説明したいことがある」と語り始めた。一発屋の芸はバカにされがちだ。なぜなら忘年会などでマネをするのが容易だからだ。それはレトルト食品のようなものだ、と。とてつもない発明なのに、自分でできてしまう故に、リスペクトする人はいない。

「“俺らの芸は本当はすごい”なんて自分で言うのは、めちゃめちゃダサいけど、自分だけでも犠牲になろうと思って言う」と前置きした上で、山田は言う。

「一発屋芸人は才能にあふれた勝ち組なんだ!」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」