「狼よさらば」平和主義者の中に眠る“狩猟本能”が目覚める

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 ただし問題がある。通常の仇討ちは敵を成敗したら決着がつく。江戸時代の仇討ちも同じ。本懐を遂げた段階で報復は終わった。ところがカージーは襲撃犯が誰なのか分からないため不特定多数の強盗を真犯人に見立て、射殺するしかない。悪人殺しで気は晴れるが、終着点がないので新しい獲物を求め続ける。シャブ中のキメセクのように延々と喜びが続くわけだ。しかも市民の支持が心地よい。心理学者がよく言う「テロリストは大衆の反応を気にして行動を起こす」となる。

 かくしてカージーは血に飢えてしまう。警察から自分が疑われていると警告されながらも、包囲をかいくぐって強盗狩りに出掛けるのは自分を止められないからだ。そこには死にたいという願望もあるようだ。

 要するに平和主義者の中に眠っていた狩りの本能が目覚めてしまった。結末はそのことを暗示している。見終わって、これからカージーがどんな人生を歩むかを想像してしまうのだ。

(森田健司)

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