「濹東綺譚」 若い女への情愛に揺れる…“大人のメルヘン”

公開日: 更新日:

1992年 新藤兼人監督

 津川雅彦の死去で真っ先に思い出したのが本作。永井荷風の同名小説をドラマ化した。

 昭和初期の東京。作家の荷風(津川)は若い愛人を囲い、バーの女給に手を出して脅されるなど放蕩をくり返していた。そんなおり、玉の井を散策中にお雪(墨田ユキ)という娼妓と出会って馴染みになる。次第にお雪への情が深まる荷風。ついには「私をお嫁さんにして」という頼みを承諾するのだった……。

 本作の公開当時、AV界で「彼女はうまくやったね」という声が上がった。彼女とは墨田のこと。実は彼女は87年に「雨宮時空子(あまみやときこ)」の名でデビューしたAV女優だった。新藤監督はそのことを知らずに墨田を起用。後日苦笑した。

 AV出身の墨田は演技の修業をしたことがないのか、セリフはまるで素人。だが、そのぎこちなさが女の純情可憐さをうまく表現している。甘えるように「あなた」と呼ぶ声が可愛い。

 最初は和風の顔が白塗りでのっぺりしているが、おしろいを落とすと一気に美しさを増す。お雪の名にふさわしく全身が美白。スレンダーな全裸を惜しみなく披露し、荷風と交合して切なくうめく。表情と声が実に艶めかしい。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    「アッコにおまかせ!」存続危機 都知事選ミスリードで大炎上…和田アキ子には“75歳の壁”が

  2. 2

    都知事選敗北の蓮舫氏が苦しい胸中を吐露 「水に落ちた犬は打て」とばかり叩くテレビ報道の醜悪

  3. 3

    石丸伸二氏に若者支持も「上司にしたくない?」…妻や同級生の応援目立った安野貴博氏との違い

  4. 4

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 5

    日テレ都知事選中継が大炎上! 古市憲寿氏が石丸伸二氏とのやり取り酷評されSNSでヤリ玉に

  1. 6

    松本人志の“不気味な沈黙”…告発女性が「被害受けた認識ない」有利な報道に浮かれないワケ

  2. 7

    石丸伸二氏は都知事選2位と大健闘も…投票締め切り後メディアに見せた“ブチギレ本性”の一端

  3. 8

    東山紀之はタレント復帰どころじゃない…「サンデーLIVE‼」9月終了でテレビ界に居場所なし

  4. 9

    安藤美姫が“不適切キャラ”発揮ならメディアは大歓迎? 「16歳教え子とデート報道」で気になる今後

  5. 10

    「アンメット」のせいで医療ドラマを見る目が厳しい? 二宮和也「ブラックペアン2」も《期待外れ》の声が…

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる