「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年、米国)
冷戦下のアメリカのある町に暮らすアラフォー独身女性イライザは、幼少期に受けた傷のせいで言葉がしゃべれない。毎朝、浴槽でオナニーしてから、清掃員として働く研究所に向かう。
平凡な毎日のある日、日めくりカレンダーをめくると、裏に書かれた格言に目が留まる。その今回の言葉から一転、甘美な水中の変態世界に引き込まれていく。
その“キーマン”が、研究所に持ち込まれた半魚人。当初は凶暴で、高圧的な警備員の指を食いちぎったりしたが、彼女と心を通わせるうちに恋に落ちる。
チープな展開でも、傑作「パンズ・ラビリンス」で注目されたギレルモ・デル・トロ監督の演出は力強く、独創的なビジュアルは圧巻。同じようなダークファンタジーの舞台をスペインからアメリカに変え、バージョンアップしている。
半魚人を巡って、生体解剖計画が浮上し、話が動く。“彼”を助けて海に逃がそうとする彼女を助けるのは、ゲイの老画家やアフリカ系黒人女性、渋々スパイになったロシア人博士たち。周りもイライザと同じように自分の権利を声にして主張できない。その設定が興味深い。