切り裂き摩ゴーレム(2016年、英国)
1880年、英国ロンドンの街は、連続猟奇殺人鬼ゴーレムの恐怖に震えていた。劇作家ジョンが毒殺され、妻で人気舞台女優リジーが夫殺害容疑で逮捕された。
ベテラン刑事キルデアは、殺されたジョンこそがゴーレムだと睨んで捜査するが、なかなか証拠をつかめなかったため、死刑の可能性もある妻に捜査協力を依頼する。
リジーは、不遇な生い立ちをバネに舞台女優にあこがれる。母の死後、小銭を握りしめて人気喜劇役者に弟子入りすると、師匠に贈られた言葉がコレだ。実は、師匠もゴーレム容疑者のひとりだった。
霧の都を舞台に湿度の高いゴシック調ミステリーとドロドロの人間模様が展開。暗いロンドンの街並みは、エドガー・アラン・ポーの世界観を彷彿とさせ、ミステリー好きにはたまらない時代背景だ。
キルデアを演じるのは英国を代表する名優ビル・ナイ。アナログな捜査にヤキモキしつつも、知的で重厚な振る舞いが、見る者を映画の世界観にぐいぐいと引き寄せていく。
殺害シーンはグロテスクながら、嫌悪感なく見られるのは、作品そのものがB級のノリで作られているからだろう。気取り過ぎていないのが、とてもいい。
ミステリーは、展開を先読みするのが面白い。でも、本作は、下手に勘ぐることなく頭を空っぽにして見るのがおすすめ。そうすればラストのどんでん返しに度肝を抜かれること請け合いだ。