スベっても前に 霜降り明星せいやの強い心を培った「体験」
中学の教室ならそれでドッと笑いが起きるはずだった。しかし、クラスメートは誰も、せいやがどんな人間なのかを知らない。知らない男が急に意味不明のことを叫んでいるだけ。だから、思いっきりスベってしまったのだ。
この日を境にイジメが始まった。翌日学校に来ると、自分の机が逆さまに置かれていたのだ。だが、せいやはめげない。「さあ、勉強しようか。……できるか!」とノリツッコミをするのだ。しかし、やはり全然ウケなかった。そんな日々は続き、ストレスでハゲだした。それでも明るく振る舞うことをやめなかった。
転機になったのは、文化祭だった。クラスで演劇をやることになり、面倒なことはアイツにやらせようと、せいやが脚本を書くことになった。せいやはチャンスだと思った。1日で書き上げ、それを披露すると大ウケ。結果、学校で1番大きな賞を取り、クラスメートから大きな「石川(=せいや)」コールが鳴り響いた。
「僕は笑いでイジメをはね返したぞ!」
せいやが感情を爆発させると、体育館は映画のように沸き返った。その日からクラスでの立ち位置が劇的に変わったのだ。