「あなたの番です」も…“猟奇殺人犯”が多用されるワケ

公開日: 更新日:

「類似品が腐るほど再生産されるのは、作り手も演者も楽だからでしょう」と、映画批評家の前田有一氏はこう続ける。

「サイコパスの猟奇殺人犯は、記号的にはファンタジー映画のモンスターと一緒で、何でもアリ。設定に多少無理があっても『だって普通じゃないもんね。仕方ないよね』で済まされてしまう。犯人を猟奇殺人犯にしておけば、どこにも角が立たない。視聴者から『職業差別だ』なんてクレームが入るリスクも少ないわけです。その点、動機がある殺人ドラマは、見る側を納得させる心理描写が難しい。作り手の力量が問われます」

 犯人を猟奇殺人犯にしておけば、コンプライアンスがどうだ、ポリティカル・コレクトネスがどうだ、とかに頭を悩ませる必要もなくなる。

「サイコパスという言葉自体あまり知られていなかった時代に、ゼロからレクター博士をつくり上げたアンソニー・ホプキンスはさすがですが、今は猟奇殺人犯の演技のお手本がいくらでもある。演者も楽でしょう。ただ、犯行がバレた途端に狂ったように高笑いする犯人が多いのはいかがなものか……。いずれにせよ猟奇殺人犯に頼りすぎ、動機など心理描写の部分をおろそかにしていると、日本のドラマも映画も深みがなくなるばかりです」(前田有一氏)

 もちろん、2017年公開の映画「三度目の殺人」(是枝裕和監督)のように猟奇殺人犯に頼らない秀作もあるが、それは役所広司広瀬すずの演技力があってこそか。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」