サメフ・ゾアビ監督「表現を諦めたら状況認めるのと同じ」

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 ――日本では忖度や自主規制といって、政治的な発言を控え表現も封じるという、笑えない風潮がまかり通っています。

「パレスチナ問題でいえば、私たちが求めているのはフリーダムと、人としての権利です。占領下では、それすら奪われている絶望的な現実があります。糾弾したり、訴えても、イスラエル側は目をそらし、耳を塞ぐ。でも、しょうがないと諦めてしまったら、その状況を認めるのと同じじゃないですか。チャプリンが言うように、私たちが本当に笑うためには現実と向き合い、痛みを取り除いて、それで遊ぶことができなければならないと思います。日本の『忖度』は詳しく分かりませんけど、創作の過程では軍事的な占領と同じかそれ以上、精神的な占領があり、それとの闘いもありました」

 ――日本では隣国韓国との関係が悪化しています。

「相手の言い分が事実と違ったり、弱みをついたりしても、関係はますます悪化しますよね。ただ、庶民や生活レベルでみると、本作に登場させたフムスという伝統料理のように、国境や対立を超え、情勢にかかわらず愛されているものがありませんか。実際に相手方と会ってみたら、政治家の言う状況と全然違っていたりするものです。同じバスに乗り合わせて、民族がどうのとか言ったって、運行を妨げるだけ。お隣同士ならなおさら、いがみ合っても意味がないですよ。本作ではイスラエルの芸術教授から『君の映画はパンチなんだけど、同時にお腹をくすぐられる』と言われ、言いたいことが伝わり、ヤッターと思ったのを覚えてます」

 ――アカデミー国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)ルクセンブルク代表に決まりましたね。受賞したら何と言いますか。

「フリー、パレスチナ!って叫んじゃおうかな」

 (聞き手=長昭彦/日刊ゲンダイ)

 11月22日から新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開。

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