山崎育三郎は歌うか 最終前週を締める「イヨマンテの夜」
もともと、この曲は菊田が脚本、古関が音楽を担当したラジオドラマ「鐘の鳴る丘」で使われた劇中歌。奥多摩の山奥で木を切っている山人が「アーアー」とメロディーを口ずさんでいるという設定だった。これがあまりにも評判がよかったので、レコード化する話になり、急遽、菊田が歌詞をつけたのだ。
■「熊送りの祭り」を意味するイヨマンテ
イヨマンテとはアイヌ語で「熊送りの祭り」を意味する。狩猟の神に、山や海からの恵みをもたらしてほしいと祈るアイヌの儀式である。3日間にわたって行われるという。菊田がアイヌ語を使った理由は、ちょうどそのころ、アイヌの取材をしていたからだ。北海道先住民の暮らしに興味を持ち、ドラマでも生かそうと考えていたのである。
それが実を結んだのは「君の名は」。1952年からラジオドラマ(NHK)がスタートし、平均聴取率は49%。放送が始まる木曜午後8時半になると、銭湯の女湯が空っぽになるという空前の人気ドラマだった。翌年には岸恵子(88)をヒロインに映画化され、こちらも大ヒットした。いずれも菊田が原作、古関が音楽を担当した。
菊田のアイヌ取材の成果が出たのは映画版の第二部である。アイヌのうら若き女性ユミが登場し、主人公・春樹(佐田啓二)を慕う切ない乙女心が描かれる。ユミを演じたのは故・石原裕次郎の夫人、北原三枝(現・石原まき子)だった。