「親子公演」は恐るべき稽古の連続…よくぞ、こぎ着けた!
稽古場は全員マスクは装着したままだから最初の本読み(台本を見ながらセリフを読む)をやった時なんて信じられない光景であったのだ。
マスクはすでに述べたが、それだけではなくテーブルを前に座った出演者の前と左右に頭よりもはるかに高いアクリル板がそびえているという状況……。さらに悪いことに若い人たちは顔を合わせるのが初めてだから、本読みの声もどこか謙虚で小さめであったのだ。
「じゃあ、本読みを始めます! プロローグから最後までとりあえず通して読んでみましょう!!」とさすが百戦錬磨の演出家だけあり、稽古場中に大きな声が響き渡る。
ところが、その直後始まった本読みは「……です」「あなた……でしょ……」「いかに……で……」「ボソボソボソ」とマスクとアクリル板と謙虚にはばまれ、だれも蚊の鳴くような声だったのだ!! とにかく自分のセリフのタイミングを聞き逃したくないから、みんな耳に手のひらを当てるから口元は正面を向かず、さらに「ボソボソボソ……」、そんな独り言のような本読みが1時間半も続いたのだった……。
あの日から三十数日……よくぞここまでたどり着いた!! みんなスゲーよ!! (つづく)