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荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<42>勃起せよ!チロは勇気づけるために飛び跳ねてくれた

公開日: 更新日:

 この写真は、『センチメンタルな旅・冬の旅』のラストシーンだね(1991年刊行の写真集。1971年に自費出版した私家版『センチメンタルな旅』からの再録と、妻・陽子の死の前後の写真「冬の旅」による2部構成。500冊を超える荒木の写真集・著作の中でも代表作の1冊)。

■部屋にこもってないで、外に出ろ、「生」に向かえってね

 陽子が亡くなったのは雪が多い冬だったんだよね。陽子が亡くなった後、雪が降った日にチロも外に出られなくて寂しかったんだな。ガラス戸を開けたら、バルコニーにパーッと飛び出して跳ねたんだよ。降り積もった雪の中に出ていってね、跳ねてくれるわけ。ほら、シッポが勃起してるだろ(笑)。勃起せよ、外に出ろ、跳ねろって、オレを励ましてくれたんだ。ふつう猫はこたつで丸くなってるはずなのに外に出て行くんだよ(笑)。オレのことを勇気づけるために、飛び跳ねてくれたんだよ。部屋にこもってないで、外に出ろ、「生」に向かえってね。

 陽子がずーっと入院してて、一人で部屋にいるとみんな止まってるんだよ。動くものとか体温があるものは何かっていうとチロなんだよね。飛びかかってきてくれたり、動いたりしてね。オレが陽子の見舞いに病院に行って帰ってくるだろ。シ~ンとしている。音もない。気持ちもそうだからね。そうするとね、チロが家の中を走り回ってくれたりしてね。チロがいなかったら部屋にいられなかったかもしれない。チロがそばにいてくれたんだよ。

妻亡き後の写真はチロちゃんとの共作だね

 これは彼女の1周忌かな。陽子がいなくなってテーブルが錆びてね。バルコニーでチロとふたり。「チロ、こい」っていうんじゃないんだけど、そう思うとくるんだよねぇ、これが。ポーンとくるの。元気だったね、チロちゃんも。不思議でしょうがないんだ。なんだろうねぇ、ポーンてくるのはね…。 

 妻亡き後の写真はチロちゃんとの共作だね。陽子が亡くなった後、オレに寄り添って、励ましてくれたのがチロ。そのチロもね、逝っちゃったね(陽子の死から20年後の2010年3月2日、チロが息を引き取った)。

(構成=内田真由美)

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