年に一度の「顔見世」で光った“プロデューサー”猿之助の企画力
第一部は片岡愛之助と中村壱太郎の「神の鳥」と松本白鸚の「井伊大老」。愛之助と壱太郎は兵庫県豊岡市にある芝居小屋・永楽館で毎年のように公演していたが、そこで2014年に初演された舞踊劇。永楽館へはなかなか行けないので、歌舞伎座での上演はありがたい。小さな芝居小屋を前提にして書かれたものだが、大劇場の歌舞伎座に移してもすきはない。狂言師として登場する愛之助と壱太郎が、やがてコウノトリとなり、最後、愛之助は山中鹿之介として登場。
「井伊大老」は、緊迫した政治情勢の中での側室とのやすらぎのひとときを40分ほどで描くもの。事件が起きるわけではないので筋の面白さではなく演技力で見せるしかないが、白鸚、中村歌六、中村魁春が破綻なく演じきる。
第二部「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」は、坂東三津五郎の七回忌追善で、息子の巳之助が曽我五郎を初役で務め、中村時蔵が十郎、尾上菊五郎が工藤祐経で支えている。
仁左衛門は「連獅子」を孫の千之助と。とにかく、華がある。
(作家・中川右介)