「ぜんぶ、ボクのせい」松本まりかの姿態もイイが…寄る辺なき少年の試練と諦観を見よ
「大人は判ってくれない」を想起
おっと、まりか嬢に目を奪われ過ぎるのは禁物。本作の主眼は、そんなモンダイ母に見捨てられ、せっかくのホームレス中年と少女との“生活”も暗転を迎える寄る辺なき少年の悲痛な試練だから。
この映画に、当時27歳のフランソワ・トリュフォー監督の代表作「大人は判ってくれない」(1959年)を想起する人も少なくない。私の場合は加えて、この主人公の傷つき方に、こちらも名作「バルタザールどこへ行く」(64年)を思い出した。
人間たちのエゴに翻弄される物言わぬロバのバルタザールと違って、この少年は当然のように声を発する。「ぜんぶ、ボクのせい」、と。何かと“他人のせい”にする輩が多い中、彼は毅然とそう答える。この底知れぬ諦観、諦念を13歳の彼に言わせることが凄い。
そんな絶望の中にも一条の光を与えるのが、エンディングで流れる大滝詠一の「夢で逢えたら」だ。この名曲ひとつで見た後の印象も大きく変わる仕掛けにもなっている。
個人的には、少年少女を主人公にした作品は紋切り型が多く、苦手なのだが、本作は明らかに一線を画する。誰にも多少はあるだろう、遠き日の少年時代の“暗い記憶”に寄り添う映画だからだ。
(新宿武蔵野館ほかで全国順次公開中)