【寄稿 北島純】5本の映画で理解する「カルト」の真の恐怖 「サイレントヒル」も必見

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■浦沢直樹原作の「20世紀少年」

 ではカルトが政治を牛耳るとどうなるか。堤幸彦監督の「本格冒険科学映画 20世紀少年」全3部作(2008-09年)は浦沢直樹の漫画を原作とする日本映画の金字塔。教祖「ともだち」が率いるカルトは大学や警察に浸透し、「友民党」を創設して政界に進出。ウイルス散布テロを起こす一方でワクチンを独占供給して政治権力を掌握する。

「ともだち」は更に暗殺事件を自作自演し、死んだと見せかけて「国葬」の場で生き返るのだ。キリストを想起させる再臨劇に世界は熱狂、「ともだち」は独裁的世界政府を樹立する。この茶番と腐敗に立ち向かうのが主人公ケンヂ(唐沢寿明)と姪カンナ(平愛梨)。ロック音楽フェスのエンディングの後に流れる前日譚は逃せない。カルトの恐怖を描く映画的想像力は、現実を冷静に見据える支えになる。

 その点でカルト教団と暗殺を描いた村上春樹の名作小説「1Q84」の映画化が今こそ待望される。

▽北島純(きたじま・じゅん)社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院修了。駐日デンマーク王国大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。専門は情報戦略論、コンプライアンス。

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