天童よしみさん「NHK紅白出場」に心から安堵、あのタイムレスな歌声の偉大さよ
大晦日の『第73回NHK紅白歌合戦』の出場歌手が発表された。賛否両論あれど、紅白はこの国有数の長寿テレビ番組である。現在もなお放送業界と芸能界で破格のステイタスを誇ることは周知の通りだ。「紅白」のように、番組名に含まれる普通名詞がそのまま略称として通用する例はそうそうない。「大河」や「のど自慢」くらいか。あ、どちらもNHKだな。
紅白をすべての歌手が目指す必要はない。そんな時代でもない。だが歌づくりを生業とするぼくは、紅白が夢という歌手と組む場合はその実現に向かって尽力する。当然のことだ。裏方にとって紅白は達成すべき「目標」であり、運だのみの「夢」ではない。
出場経験豊富なベテランとの仕事では、いっそうの注意と集中力が必要とされる。だから、今年の紅白発表で天童よしみさんのお名前を確認したときは心から安堵した。9月に発売された50周年記念シングル「帰郷」で、ぼくは初めて彼女に歌詞を提供していたのだ。紅白発表に先がけて同曲は『日本作詩大賞』にもノミネートされたので、二重の安堵だった。
念のために言うなら、天童さんは紅白の常連中の常連。今年でじつに通算27回目、26年連続出場となる。人気・実力ともに演歌界のトップクラスの彼女との仕事で絶対に回避したかったのは、自分が関わるせいで連続出場が途絶えるという事態。先ほど「安堵」と言ったのはそんな不安が払拭されたから。いっそ若手との仕事ばかり重ねれば気楽でいいかというと、それも大いに疑問だ。歌の世界には、キャラクターを確立したベテランだけが表現できる領域が確かに存在する。作り手にとってそれは抗いがたく魅力的なのである。