著者のコラム一覧
鈴木敏夫スタジオジブリ代表取締役プロデューサー

1948年、愛知県名古屋市生まれ。72年に徳間書店に入社。「週刊アサヒ芸能」「アニメージュ」編集部を経て、84年に「風の谷のナウシカ」を機に映画の世界に。89年からスタジオジブリ専従。「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「かぐや姫の物語」など、宮崎駿、高畑勲と共にジブリ作品を生み出す。2022年11月、ジブリパークが愛・地球博記念公園(モリコロパーク)内に開園。スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。(撮影:荒木経惟)

笠智衆3部作編(3)「岸本さんからは生命感があふれていて、笠さん演じる老人との対比になっている」

公開日: 更新日:

 圭作は、金目当てに自分を追いかけてきた麻美と昭二にポンと150万円くれてやったり、沢村貞子演じる老婦人をナンパしたりする。

「笠さんは沢村さんと宿を共にしますが、沢村さんは人妻で、夫を裏切れないということで何もなく終わるんです。沢村さんは約300本も映画に出ている女優ですからね。一線を越えそうになる時、ギリギリのところでのかわし方がうまい。沢村さんは戦前に左翼演劇運動に参加して2度捕まっていて、映画へ本格的に出だしたのはその後なんです。やはりこの年代の女優さんは経てきた遍歴が凄いので、さりげなく人生の年輪を感じさせる演技をしますね。また沢村さんの場合は芸能一家で甥が津川雅彦と長門裕之、弟が加東大介、兄が沢村国太郎なんです。沢村国太郎さんといえば僕らの世代だと、とにかく悪役のイメージ。こういう芸能人の関係図はなぜか僕の親父が詳しくて、子供の頃から沢村さんには沢村国太郎の妹という刷り込みがありました」

 沢村貞子は3回結婚しているが、2人目の夫は俳優の藤原釜足。「冬構え」には、その藤原釜足も最後に登場する。

「昭二の祖父・惣造役で、青森の下北半島で一人暮らしをしているんです。圭作は断崖から飛び降り自殺を図るんですが死にきれず、惣造の家で介抱される。その夜、死ねなかったことで言いようのない孤独感に襲われ、部屋の中で一人泣く笠さんの演技は忘れられないですね。翌日、昭二は惣造に『生きているのが一番だ』と圭作に言ってくれと頼むんですが、惣造は『わしは、生きているのが一番だのって、そしたことは言えね』と言う。圭作も『死ぬのも容易じゃない』と語り、死生観を共有した老人2人は、この家で一緒に暮らすことになるんです。つまり人生の終わりに向けて身支度をし始める彼らを、『冬構え』というタイトルが表しているんですよ」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本の「お家芸」はなぜ大惨敗だった?競泳&バドミントンは復権どころかさらなる凋落危機

  2. 2

    悠仁さま受験勉強しない夏休みで気になる「本当の学力」…“高校で異例の成績”報道も

  3. 3

    エースの留年が影響か?昨夏王者・慶応まさかの県大会16強敗退…文武両道に特別扱い一切なし

  4. 4

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  5. 5

    選手村は乱交の温床、衝撃の体験談…今大会コンドーム配布予定数は男性用20万個、女性用2万個!

  1. 6

    吉永小百合(6)「デスク、大変です。吉永小百合と岡田太郎ディレクターが結婚します」会員限定記事

  2. 7

    中丸雄一の密会騒動“体の関係ナシ”で謹慎?アダとなった“旧ジャニーズ随一”お茶の間好感度の高さ

  3. 8

    IOCにケンカを売った世界陸連の至極まっとう ロシア選手の競技復帰勧告をキッパリ拒否

  4. 9

    夏季五輪からマラソン消滅も…世界陸連コー会長がIOC会長選へ出馬意欲、“大改革”に現実味

  5. 10

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況