著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

不毛な世代間闘争、「世代」という名のカメラでは解像度が低すぎる

公開日: 更新日:

 ぼくは同書を幾度となく首肯しながら読んだ。かつて世代論が大きな効力を持ち得たことは認めるが、いま現実を映し出すには「世代」という名のカメラでは解像度が低すぎると感じていたからだ。低スペックのカメラを使い続けるデメリットは、撮るときよりも映し出すときに生じやすい。つまり傍観者から当事者に立場を移したとき、ハレーションが起こる危険性は高まる。世代だけじゃない。性別だって、国籍や出身地だってそうだ。無論そんな属性も人となりを知るきっかけにはなるけれど、それ以上に重要なのは、どういう価値観で生きているかだろう。

 著作物だけでなく、個人的なやりとりのなかでも竹田さんは示唆に富んだ日本語表現を与えてくれる。最もつよく記憶に残っているのは「さまざまな属性のマイノリティ」というフレーズ。音楽エージェントとしてどんな人たちに音楽を届けたいかという話題のなかで出てきた。

 日本にいればマジョリティであるぼくも、アメリカにいけば「アジア系」という括りのいちマイノリティになる。女子校ではマジョリティである女子だって、自衛隊に入ればマイノリティ。そこに悪意が付け入るとき、あってはならない差別や事件が生まれてしまう。マジョリティとマイノリティは、ある瞬間に急反転するラベルのようなもの。そう、世界中の人間は誰ひとり残らず「さまざまな属性のマイノリティ」なのだ。そんな気づきを与えてくれるZ世代アジア系アメリカ人・竹田ダニエルの言葉に耳を傾けたい。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    フジテレビ「第三者委員会報告」に中居正広氏は戦々恐々か…相手女性との“同意の有無”は?

  3. 3

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  4. 4

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  5. 5

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  1. 6

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 7

    冬ドラマを彩った女優たち…広瀬すず「別格の美しさ」、吉岡里帆「ほほ笑みの女優」、小芝風花「ジャポニズム女優」

  3. 8

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 9

    やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

  5. 10

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」