酒井とおるさんは今…「もう引退やなと思ってた」兄のくにおさんが慢性虚血性心疾患で急逝
70年、浪曲漫才コンビ「さがみ三太・良太」に入門
さて、岩手出身のとおるさんは県立水沢高校卒業後、テレビの世界に憧れ上京。千代田テレビ技術学校放送学科に通い裏方を目指していたところ、先に上京し舞台に立っていた3歳年上の兄・くにおさんに誘われ、70年、浪曲漫才コンビ「さがみ三太・良太」に入門。コンビでコントを始めた。
「アタシらは5人きょうだいの4番目と5番目。アタシは人見知りで静かな方やったから『しゃべれるようになるかな』と思ってこの世界に入ったんです。アニキは社交的で行動派やったから、アニキについてここまできました。アニキは小柄で日本舞踊とかができるから、昔は着物で女装したりしてたんですよ(笑)」
74年、大阪へ。「酒井くにお・とおる」として漫才を始め、くにおさんが「とおるちゃん!」と突っ込んだり、とおるさんが「ここで笑わんと笑うとこないよ」と自虐ギャグを披露するなどして、幅広い年齢層の人気を獲得。NHK連続テレビ小説「芋たこなんきん」などのドラマにも出演した。
「最初の4年はアニキと一緒に暮らし、食べられんのでアタシがバイトして、アニキが料理や洗濯をしてました。若いときは、苦にならんかったですね。アニキは魚が食べられんのに、アタシのためにサンマを焼いてくれたりしてね。仲がいい?いや~若いときは、たばこの最後の1本をどっちが取るか、みたいな小さいことで、よくケンカになってましたよ。着ていたワイシャツがビリビリに破れるくらいの、激しいケンカも(笑)。今となってはいい思い出です」
(取材・文=中野裕子)