「妖怪の孫」の先行試写会で偶然並んで座った3人の1968年生まれ
出版、放送、ネットと軽やかにメディアを越境し、独自のスタンスで宗教と政治の関係を追求する鈴木エイト。ヒップホップシーンの黎明期から活躍するキングギドラのメンバーとして、また長い滞米経験を持つ親トランプ派論客としても無二の存在感を放つKダブシャイン。ふたりが最近相次いで新書を出版した。重なりあう部分がまるでなさそうな2冊だが、読み比べると驚くほど通底するものがあることに気づく。両書ともに自叙伝の類ではないのに、それぞれ著者の実人生があぶり出される印象を与えるのだ。
まずエイトさんの『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社+α新書)。タイトルが示す通り、昨年7月に起きた元首相銃撃暗殺事件の被告についての著書である。今年3月に出版された五野井郁夫と池田香代子の共著『山上徹也と日本の「失われた30年」』をはじめ、山上被告と彼が生きてきた時代を論じる書籍はすでにかなり出ている。後発の本書が異彩を放つのは、何といっても著者が、事件が起きる9日前に山上被告がツイッターで直接アプローチを試みた相手だったという衝撃的な事実に拠る。