9月に落語真打ち昇進の林家希林は酒もめっぽう強い! 木久扇師匠と2日で3升、父は元大関
元横綱白鵬とウオッカでがっぷり四つ相撲に
横綱は200㏄ぐらい入りそうな銀製のボウルに氷を2、3個入れてその上にアルコール度数80%のウオッカをドボドボッと入れてガッと飲み干しました。そしてその器に同じように氷とウオッカを入れ、「飲め」と差し出され……。僕が飲み干すとまた横綱が飲み、僕が飲み……を繰り返すこと8回、横綱とガップリ四つです。
次の日は札幌に行く予定でした。朝8時半の飛行機に乗らなくちゃならないと思いながら「明日は二日酔いか……」と言ったら、横綱は「それなら吐くほう(白鵬)がいいよ」って(笑)。ユーモアがありますね。
父と差しで飲んだことはまだないですね。父は日本酒が好きで、70歳ごろまではよく飲んでいたので、稽古場の上がり座敷には日本酒がたくさん置いてありました。
中2の頃、父の部屋を継いで相撲取りにならなくちゃいけないかな、準備した方がいいかなと思い、「稽古する」と志願したことがありました。実家は1階が稽古場で土俵があるので、冬の朝に裸になってまわしをつけて稽古場に下りていったんです。そうしたら寒いのなんの。そこに父がやってきて、そばにあった一升瓶をラッパ飲みして日本酒を口に含み、いきなりブーッと吹きかけられた! ビックリしましたね。「汚い!」と思ったけど、「温かくなるから」って言うんです。そうか、お相撲さんは体を温める時にこんなことするんだとわかった。お酒は喉を通る時に熱いと感じるのと同じように、皮膚の表面に触れても熱いと感じるんですね。
中3で身長が182センチありました。清国の息子ですから、大鵬親方や千代の富士さん、先代若乃花さんら、レジェンドと言われるみなさんから「相撲をやれ」「絶対伸びる」と勧められていました。でも、高校時代に学校の芸術鑑賞会でうちの師匠の落語を聞き、大相撲ではなく、落語家の道を選び、大学時代(慶応大)に入門しました。
父は僕の気持ちを尊重してくれました。ラジオが好きでよくラジオを聴いているのですが、僕の噺が流れてくることもあるらしく「急におまえが出てきてビックリした」と笑っています。
真打ち昇進と同時にファンクラブもつくらせていただきました。後援会は敷居が高いと思うので、ファンクラブなら落語にあまりなじみのない方にも興味をもっていただきやすいかな、と。初めての方にもわかりやすい落語を目指していきたい。僕を入り口にして、落語の裾野を広げることができればと思っています。
(聞き手=中野裕子)
▽本名:佐藤嘉由生(さとう・よしゆき) 1989年2月、東京・文京区生まれ、浅草育ち。モデルを経て2009年に林家木久蔵(現木久扇)に入門。13年、二ツ目昇進。23年9月、真打ち昇進、名前を木りんから希林に改めた。「真打昇進襲名披露興行」10月6、10日は「新宿末廣亭」の夜の部、11、17、20日「浅草演芸ホール」と22、24日「池袋演芸場」の昼の部のトリを務める。