ひとつだけ、音楽と同じくらい大切にしてきたものがある。
元日に発生した能登半島地震により被災されたみなさん、ならびにそのご家族やお近い方々に心からのお見舞いを申し上げます。みなさんの安全と被災地の一刻も早い復興を心よりお祈りするとともに、復興に尽力されている方々の安全も願ってやみません。
2日の朝は不思議な初夢で目が覚めた。ぼくはよく北海道物産展が開かれるようなデパート催事場らしきスペースにいた。50脚ほど置かれたパイプ椅子のひとつに座って。連れはいない。そもそも客の姿はまばらなのだ。スペースの奥には、ステージと呼ぶには貧相なせいぜい高さ20センチ程度の演壇。会議卓には音響機器が設置されていた。
「ダメだよ、やっぱり。ぜんぜん客来ねぇし。今どき音楽評論家のイベントなんて誰が来る!」不機嫌丸出しのダミ声で悪態をつきながらぼくのところにやってきたのは、さっきまで喉をきつめに絞った作り声で「ワンツーワンツー」とマイクチェックに精を出していた男。このあと始まるイベントの主役である。シャイニーな素材の黒シャツは長年のトレードマークだろうか。派手な柄のパンツに裾をインして若ぶってはいるが、腹部のなだらかな曲線は彼が経た歳月を誤魔化せてはいない。どうやらぼくとは長い付き合いらしく、口を衝いて出るのは身も蓋もない愚痴ばかり。ぼくは適当な相槌を打って聞き流すのだが、評論家も特段それを責めるふうもない。きっとそれがふたりのいつものやりとりなのだろう。