「不適切にもほどがある!」でコンプラ無視炸裂! そして「昭和歌謡」はスゴかった(前編)
昭和のリスナーが目くじら立てず聴いたワケ
阿久がデビュー間もない岩崎宏美に書いた「ロマンス」も、今だとセクハラか。
♪息がかかるほど~そばにいてほしい~
この歌詞を見たある若い女性は「男目線で気持ち悪い」と言った。発売当時、スタッフ間でも「宏美が歌うには色っぽすぎるのでは?」という議論があったという。
なかにしが奥村チヨに書いた「恋の奴隷」は、タイトルからして一発アウトだ。歌詞もすごい。
♪右と言われりゃ右むいてとても幸せ~あなた好みの~あなた好みの~女になりたい~
男尊女卑にモラハラ、セクハラがいくつも重なって、麻雀なら満貫、いやハネ満といったところではないか。
断っておくが、私は別に両巨匠を批判しているわけではない(むしろ大尊敬)。昭和に大ヒットした曲の歌詞が、今の基準で見るとアウトになりそう、という事実を述べているだけだ。
当時問題にならなかったのは、昭和のリスナーが目くじらを立てず、「まあ歌の世界の話でしょ」とわかって聴いていたからだ。一方、歌う側もただ黙って歌っていたわけではない。前述の「ロマンス」も、この歌詞を歌うと決めたのは岩崎自身だった。
「私が歌うと、そんなに色っぽく聞こえないから大丈夫」と言い、いやらしさを感じさせないみごとな歌唱力で大ヒットさせてみせた。岩崎は当時16歳。昭和は今より“大人”が多かったのかもしれない。 (後編につづく)
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▽チャッピー加藤
昭和42年生まれ。歌謡曲をこよなく愛し、ドーナツ盤5000枚を所蔵。著書に「昭和レコード超画文報1000枚」がある。