映画「侍タイムスリッパー」は必見! 時代劇と侍への愛があふれる快作

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 この前半は、“劇”としての斬り合いに戸惑いながらも、剣の腕を生かすために「斬られ役」に打ち込んでいく高坂を、現代の生活に馴染んでいくさまを含めてコミカルに描いている。その背景に、もはや「斬られ役」では食べていくこともままならない、斜陽の時代劇の現状もきっちりと映し出している。

■生き方にけじめをつけるため、劇中で対決

 後半になって、作品は一気に転調する。一度は時代劇から離れた大スターが、久々に時代劇映画に主演すると発表。その宿敵となる相手役に、高坂を指名してきたのだ。実はこの大スターは、30年前にタイムスリップしてきた、かつて高坂が狙った長州藩士。もはや互いの藩は明治維新で消え失せたが、高坂の中には大スターに対する複雑な感情がある。2人はそれぞれの侍としての生き方にけじめをつけるため、劇中の対決へと臨んでいく。

 何といっても高坂を演じた山口馬木也の演技が素晴らしい。彼は「剣客商売」シリーズの秋山大治郎や、新たに松本幸四郎主演で始まった「鬼平犯科帳」では“鬼平”の親友・岸井左馬之助を演じているが、長編映画の主演はこれが初めて。ここでは長年時代劇で培ってきた剣技を存分に披露して、しかも“劇”で使う竹光を重量感が出るように見せたり、クライマックスの闘いでは“本身”を使った斬り合いの緊張感も伝えている。言ってみれば彼は、時代劇俳優と侍の2つの顔を持つ男を演じ分けているわけで、その表現力の確かさで2時間10分の作品を最後まで見ごたえのあるものにしている。

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